<『商工ジャーナル』2001年7月号掲載>
《抜粋》

IT時代に飛躍するサービス企業とは

●サービスの時代

 モノが売れない時代である。しかし、そういう時代に若者は携帯電話に熱中し、連休や夏休みともなると、旅行に出かける人々で駅や空港はごった返している。また、小売業として登場したコンビニエンスストアであるが、最近は宅急便の受付けや、公共料金の決済代行など、サービス面でのビジネスを展開し、銀行業務まで始めた。
 人々は、モノを欲しがらなくなり、「楽しさ」や「便利さ」にお金を使い始めている。小売業もそのことに気がつき、「営業時間の長いスーパーマーケット」、「観覧車のあるショッピングモール」、「配達をしてくれるスーパーマーケット」、「どんなクレームにも応じる百貨店」など、サービス面での充実に力を入れ始めている。
 そういう時代にインターネットが登場し、サービス業に与える影響度は、ますます大きくなっている。インターネットが登場した当初に、目を引いたのは、検索サービスやバナー広告ビジネスなど、バーチャルの世界ですべてが完結するベンチャービジネス系のサービス業であった。こうした目新しいインターネットベンチャーに、人々は狂喜し、多額の投資を行った。しかし、インターネットバブルははじけ、これからが本来のインターネット革命の始まりである。
                        <中略>

●勝ち組は「コンセプトある企業」

  サービス業の時代とは言え、業界によっては業績の悪い企業も少なくない。
 同じ業界にあっても、盛況を誇っている企業もある。その違いは、もちろんあるわけだが、盛況を誇っている企業は、インターネット時代にフィットした特性がある。この点は、非常に面白く、また、重要な点である。
 インターネット時代に、最も早く適応した業界はホテル、旅館などの宿泊業である。これは、この業界の商圏が他の業界が設定している商圏に比べて、格段に広いためである。
 従って、ネット普及率が高くなるにつれて、宿泊業界に起きていることは、早晩、どの業界にも起きると予想される。
 インターネットをうまく使いこなしているホテルや旅館は、コンサプトを明確に出している企業である。
 磐梯熱海の「きらくや」は、和風温泉旅館でありながら、B&B(ベッド・アンド・ブレックファースト)に切り替え、料金を半額にした。インターネットが普及する少し前に、B&Bに切り換えた。それまでの宴会目的で来館する客と顧客層が異なり、しばらくは苦しい状況が続いた。しかし、インターネットを導入すると、奇しくもB&Bの顧客層とインターネットの利用者は一致したのである。インターネットの利用者は、自分で情報を集め、自分の足で行動する人々である。夕食付の団体旅行をする層ではない。
                        <中略>


●明瞭会計が当たり前

  また、インターネットをうまく使いこなしているのは、旅館よりもホテルである。いくつか理由はあるが、最大の理由はホテルの部屋が、ある程度標準化されているということである。どのホテルでも、「シングル」、「ツイン」、「ダブル」という区分けがほとんどで、その区別に対して料金設定がなされている。価格設定が明確なのである。標準化された商品は、インターネットで探しやすく、インターネットと親密性がよいという特性がある。たとえば、本やCDがネットに合っていると言われるのと同じ理由である。
 サービスの特性は、形がなく見えないということがある。受けてみなければ、内容が分からない。これは、考えてみると、非常に不親切なことである。「どういう内容でいくら」。これが示されて初めて、顧客は安心して利用できるのではないだろうか。
                        <中略>

●ネットは口コミの世界

 インターネットには、ポータルサイトというものがある。そこに行けば、たくさんのサイトにリンクしており、必要な情報が揃っているという玄関のようなサイトという意味である。今まで、ポータルサイトの代表は、Yahoo!のような検索エンジンのサイトであった。しかし、今後は、目的別のポータルが注目されると見られている。たとえば、宿泊業を集めた「旅の窓口」というサイトがある。ここに行けば、地域別、目的別、料金別で必要な旅館やホテルを検索でき、予約もできる。
 目的を持ったお客にスムーズに探して貰えて、便利なようである。しかし、一面、厳しい現実が待っている。利用者の投稿情報が各ホテルごとにあり、内容は感謝もあるが、露骨な苦情もおおっぴらに曝されている。それに対して、ホテル側も対応を述べる欄がある。クレームに対して、すぐに対応しているホテルかどうかも、明確に分かるような仕組になっている。
                        <中略>

●IT技術で変わるサービス業

   製造・小売の世界にSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)という考え方がある。流通の川上から川下をネットでつなぎ、情報の共有化と伝票などの電子化により、効率化を図るというものである。
 この考え方は、中小のサービス企業でも取り入れていきたいものである。淡路島のあるカフェバーでは、ネットで酒のディスカウンターを見つけ、コスト削減を図った。また、掲示板やメーリングリストで知り合った利用者から店づくりの情報を得ている。たとえば、メニューを増やしたいということでメニューに関する情報を得て、ピザを焼くことに決めた。島内で業務用のピザ粉が入手できないので、業務用のピザ粉の販売先もネットで教えてもらい、ネットで購入している。このカフェバーの店主に言わせると、ネットは情報の宝庫である。顧客が店作りに喜んで手を貸している。
 宿泊業やゴルフ場、自動車教習所など、一部はネットやiモードでの予約受付を始めている。予約受付などの事務業務は、最もコンピュータと相性がいいものである。様々なサービス業でも、今後積極的に取り入れていきたい機能である。ネットで予約受付というと、非人間的という受け止め方をされる場合がある。その点についての考え方を示したい。予約受付をネットに任せることで、目の前のお客様への対応に集中できるということである。サービス中のスタッフが、たびたび電話対応で中断するのは、お客様とっては落ち着かないものである。ITでの効率化は、結果としてサービスの質を高める手段として利用して欲しい。
                        <中略>
   
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