< 『商業界』2000年12月号掲載>
今まで、個店としてのネットショップだけを見てきたが、ここでモール出店について考えてみたい。
モール出店のメリット、デメリット、モールのうまい利用の仕方。モール出店にあたり、気をつけたいポイントを考える。
モールのメリット、デメリット
ひとくちにモールと言っても、千差万別である。リンクするだけのもの、様々な仕組を提供するもの、料金も無料のもの、有料のもの。従って、モール加盟のメリット、デメリットは、それぞれに異なる。
しかし、モール加盟の最大の目的を集客と考えると、現在のところ、楽天市場(以下、楽天と省略)のひとり勝ち状態である。
楽天の強みとは
ネットで来場者数にあたるものは、アクセス数であるが、アクセス数で楽天は群を抜いている。また、購買率も高い。それにも増して大きいのは続々と増えているネット利用の初心者が、まず、訪れるのが楽天であるという事実である。ネットの世界では、知名度が圧倒的な力となる。
では、楽天のどこが優れているのだろうか。
(1)マーケティングの仕掛がある
楽天の大きな特徴は、マーケティングの仕掛があることに尽きる。
定期的に配信されるメールマガジン、オークション、購入希望者が増えると価格が安くなる「この指とまれオークション」のような企画である。
オークションも1円オークションや、時間限定オークションなど、お客を楽しませる仕掛にこと欠かない。
(2)誰でも出店できるシステム
楽天に加盟すると、楽天のシステムを使って、簡単にネットショップを開設できる。写真や画像の取りこみが簡単にできるので、誰でも、簡単に、毎日品揃えを変えることができる。
また、お客が買物を簡単にできるための買物カゴの仕組も、すぐに導入できる。お客がどこから入ってきて、ショップ内のどこを歩き回ったかという動線分析の仕組すら利用できる。
この仕組が、楽天が店舗数を増やせた一因であり、ショップオーナーは、技術の習得に取られるはずのエネルギーを、すべて接客や店舗運営に当てられる。
メリット 利用上の留意点 楽天に初めて出店する場合 @ ページ作成の技術習得が削減できる。
A 集客効果が期待できる。出店しただけでは売れない
→楽天大学などを積極的に利用して繁盛のノウハ ウを学ぶ
→売れているショップを研究する楽天に二店目を出店する場合 @大幅な集客効果が期待できる 本店と支店の扱いに気をつける
→楽天の支店は担当を別にするのが理想
→出店の前にシステムと業務の流れを構築し直す
出店料月額5万円は高いか?
楽天の出店料は、月額5万円固定である。他のモールを見ると、定額でなく売れた分に対するコミッションを設定しているところもある。売れないうちは、後者のほうが気楽に感じられる。また、月額1万円のモールもあり、価格が魅力のようにも思われる。
しかし、楽天が5万円という価格を設定した理由を知ると、納得できる面がある。
モールの魅力は、モール自体ではなく、やはり個店の魅力である。それは、楽天がいくらがんばっても、個店が努力しなければできない部分である。個店が魅力を出すには、個店のオーナーが努力するしかない。5万円とは、「5万円なら、出店者は惜しくてがんばるだろう」という考えで設定された価格である。
それを知ると、5万円という価格を高いとは言えなくなるのではないだろうか。
楽天に入っただけでは繁盛しない
しかし、楽天に加盟しているショップが、100%繁盛しているかと言うと、そうではない事実がある。だから、「楽天に入っても」と考えるのは、あまりに短絡的である。
人通りの多い銀座や新宿に店を出しても、魅力のない店は撤退せざるを得ないのと同じである。
楽天に出店していても、繁盛しているショップは、スタンプラリーのようなイベントを自主的に作り出している。合同オフ会も行っている。
楽天には楽天大学という場があり、そこで、積極的な情報交換を行っている。
また、楽友商店会のように、実力のあるショップが集まり、共同でイベントや宣伝、勉強会を行っている。
楽天に入ったから、それだけで繁盛するほど、ネットショップはたやすいものではない。繁盛ショップほど、陰で努力している。
楽天に入るタイミング
楽天に入る時期として、二通りある。まったくのゼロから楽天に入る場合と、すでにネットショップを始めていて、楽天に出店する場合である(図表−1)。
●初めて出店の場合は簡単に
初めての出店の場合は簡単である。5万円という出店料に納得さえできれば、入ったその日から楽天の仕組を使用して、ショップを構築できる。
初めて、ネットショップを立ち上げる手順さえ踏めば、楽天を利用せずにネットショップを開設するよりは、はるかに簡単にネットショップを開設できる。
●ニ店目を持つ場合は慎重に
難しいのは、二店目を持つ場合。それもある程度、ショップが軌道に乗っている場合である。楽天の場合は、新たにページを作成しなければならない。現在のショップとの両立、サイトの住所であるURLもすでに知られている。本店と支店との使い分けなど、考えなければならないことは多い。
また、受注情報、顧客情報の管理が一元化できない可能性も出てくる。うまく行くと、売上が二倍に伸びることもあり、システムや体制が追いつかないことも考えられる。
すでに単独で繁盛しているショップこそ、楽天への出店は、慎重に考えるべきである。
楽天を利用するポイント
楽天と言えども、完璧ではない。しかし、デメリットを事前に知っておくことで、対応はできる。
(1)自社URLが利用できない
これは、初めて出店するショップ、まだ、繁盛してないショップが楽天を利用する場合に知っておきたいポイントである。
最近は、自社URLの価値が強調されて、すでに取得しているショップも多いだろう。
このURLが、楽天に出店すると、使えないわけである。考え方はいくつかあるだろうが、
ひとつの考え方としては、URLだけは取得しておく。最初は楽天のURLを使い、楽天のショップに全力投球することを勧める。
繁盛あってのURLである。楽天の仕組の上で、とりあえず繁盛のノウホウを習得して欲しい。
(2)データベースが楽天サーバーにある
これは、ある程度の規模のショップにとって、障害になるポイントである。
通常、個店でネットショップを行う場合は、受注DB(データベース)や顧客DBは、手元のパソコンに置く。これが、楽天の場合は、楽天のサーバーにある。従って、カタログ通販などの実店舗サイドのデータと一元管理しようとすると、その都度、楽天のサーバーから移す必要がある(図表−2)。
この点については、通信速度が速くなった場合に楽天側が善処してくれることを期待したい。今の時点では、楽天のデータとその他のデータは別途管理する仕組にしておく。楽天に限らず、情報システムは、どのようなものでも制約がある。
どこかで目をつぶるのが、情報システムを使うポイントである。
(3)通信費用を押さえる
楽天のシステムは、通信回線をつないだ状態で利用する。そのため、通信費用がかさみがちである。通信費用を押さえるには、ページを作成する場合は、ある程度、文章などは作成して、デザインを決めておく。テレホーダイを利用する。ある程度、売れてきた時点で定額制に切り替えると、問題は解消する。
楽天以外のモールを利用する
楽天を中心に見てきたが、楽天以外のモールも、積極的に利用したい。販促の手段としての使い道である。検索エンジンに登録して、露出度を高めるのと同じに考える。この場合は、以下の点が選定の条件になる。
(1) 加盟料が無料であること
加盟料が無料でなくとも、ある程度、アクセスが確保できるところであれば、加盟の価値はある。検索エンジン系や決済サイト系である。ただし、アクセス数と加盟料金のバランスは考慮したい。
(2) リンク形式であること
リンク形式であれば、リンクするだけで、まったく検索エンジンへの登録と同じである。
これは、モールと言うよりも、ショッピング情報サイトと呼ばれるものである。検索する利用者が買物目的であることが、明確であるため、一般の検索エンジンより効果は高い。
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