< 『商業界』2000年6月号掲載>

  お客との付き合いも戦略的に
 
−メール、データベース、イベント−

   ネットショップを開いて、最初のお客がやってきたときは嬉しいものである。ネットショップは自動販売機ではない。究極の対面販売とも言われる。では、顔の見えないお客にどうやって接すればいいのだろうか。


実店舗と異なるネットのお客

 ネットのお客は実店舗のお客とは、様々な面で異なる。この点は確実に押さえておく必要がある。
 まず、商圏がまったく異なる。実店舗では、店の前を通るお客がすべてお客の対象である。
ネットショップでは、全国に住む特定の一部のお客が自店のお客になる。お客の地域性は、まったくない。逆に自店の販売している商品やコンセプトでお客の特性が決まってくる。
 さらに、ネットショップのライバルは、日本中の同業店である。一度、来店したお客が必ずしも来店するとは限らない。他のショップにお客が行ってしまう確率は、実店舗よりはるかに大きい。
 そこで、お客の囲い込みが必要になる。


顧客データの収集が容易なネットショップ

 最近、実店舗でも囲い込みをするために、カードの発行が盛んだ。カード発行の目的は、言うまでもなく、顧客情報の収集である。しかし、この顧客情報の収集が実店舗では、難しい。ただのポイントカードでは、個人情報を正確に取ることは難しい。お客は個人情報を出すことを嫌うからだ。氏名、住所、電話番号など、必ずしも正確に書いて貰えない。
 ネットショップでは、この情報が、100%正確に取れる。買物をするのに、偽の名前や住所を書く人はいないからだ。
 また、ひとりのお客がいつ、何を購入したかという購買履歴も、正確に取れる。これはネットショップが、実店舗に比べて格段に優れている点である。
 実店舗に比べて、ライバルが比較にならないほど多いネットの世界では、顧客情報は必ず取るべきである。


顧客情報の管理はデータベースで

 顧客情報の管理は、データベースで行う。データベースは、エクセルなどの表計算に比べると、仕組みが複雑で難しい。しかし、顧客情報を管理するには、必須なものである。すぐにでなくともいいので、勉強して欲しい。
 一般的なデータベースには、マイクロソフト社のアクセスや、ファイルメーカー社のファイルメーカーProがある。どちらも、数万円でパソコンショップで販売している。
 ただし、こちらはユードラやベッキーなどのメールソフトと連動していないので、顧客情報は、ひとつひとつ手で移すことになる。
 メールソフトと顧客管理の機能を備えたソフトウェアに『受注でポン』がある。これは、ネットショップ専用の管理ソフトで、決済業務とも連動していて、使いやすい(図表−1)。ただし、価格的には、数十万円とやや高価である。
 これらは、どちらも使いこなすのは、かなりの努力が必要である。最初から導入するのではなく、ある程度ネットショップを運営してからでよい。運営に必要な情報は何か、どのように情報が流れればいいかが分かってくると、使いこなす感覚がつかめてくる。
 いずれにしても難しいが、データベースの導入で、繁盛してきたときに仕事がかなり軽減できる。受注してから、商品発送、請求、入金消しこみの流れをスムーズにしてくれるのが、データベースである。『1st Flower Workshop』では、データベースが、2~3人分の仕事をしてくれると言っている。

図−1 データベースの種類と特徴

データベース名 企業名 入手法 特徴
アクセズ マイクロソフト社 パソコンショップで購入 安価で一般的だが、自分で設計する必要があり、やや難度が高い
ファイルメーカーPro ファイルメーカー社 パソコンショップで購入 安価で使いやすいが、自分で設計する必要がある
受注でポン ワイズプロ社 http://www.yspro.ne.jp/で問い合わせ 専用ソフトで専門家が設計してくれるが、高価

メールマガジンを発行する

 インターネットのお客との付き合いは、メールである。ホームページは、受付や展示場にすぎない。お客に訴求力を持つのはメールである。個別のお客に受注お礼メールや、商品発送メール、入金のお礼メールを出すことは当然である。それ以上に最近では、メールマガジンの威力が増している。
 紅茶や中国茶を扱っている『セレクトショップ』では、ホームページを出す前に、メールマガジンだけで紅茶を売っていた(図表−2)。今でも、メールマガジンを出す頻度は、どの程度がいいかの研究も熱心に行っている。極端な話、ホームページがなくとも、メールだけでモノは売れるが、メールなしで売ることは不可能である。それだけ、メールの力は大きい。
 メールを出すのに、顧客データベースは不可欠である。
 メールマガジンであるが、DMと似て非なるものである。繁盛店のメールマガジンを積極的に購読して、研究して欲しい。しかし、一方的に届くという点では、DMとも似ている。お客が断れる方法は、必ず準備しておきたい。
 メールマガジンの発行であるが、『まぐまぐ』を利用すれば無料で簡単に発行できる。

図−2 メールでお茶を売るセレクトショップのメールマガジン

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 [1]  ◆ 香港より....  中国茶、新入荷!! ◆
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 香港からは無事に帰国しました!

  今回もいろんな茶商をめぐって、いい珍しい中国茶を仕入れてきました!

今回、香港に行ったのは、なんといっても、あの中国茶...

 そう、香港の友達からおみあげでもらって、興奮した中国茶...

  「碧螺春」を仕入れてきました!

すべてのリーフが柔らかい新芽からできている、最高の中国茶です!

興奮した...「碧螺春」イチオシ!!
http://www.verygoodtea.com/pirochun.html

リピーター顧客へのサービス

 顧客管理を行う目的は、省力化やメール発行だけでなく、リピートのお客へのサービスである。子供服ショップ『Fellows』のようにポイント制による割引などのサービスを積極的に行っているショップも多い。
 ワインショップ『ワイナリー和泉屋』では、毎月のように、ワインを味わうオフ会を開いている。ワインだけでなく、スタッフにフードコーディネーターも抱え、ワインに合う料理も出している。
 おみやげ物ショップ『清川屋』では、夏場が旬のだだちゃ豆を提供し、和泉屋と『ワインとだだちゃ豆を楽しむ会』を共同開催する。こうした共同オフ会で、お互いの顧客を取りこむことも可能になる。
 顧客の共同開拓という点で、さらに積極的な活動を展開しているのが、シルクフラワーの『山久』である。『山久』は楽天に加入している。楽天に加入していること自体が、顧客開拓と顧客サービスの手段である。しかし、それだけに満足せずに、他の数店と協力して協同スタンプラリーや、共同購買的な"この指とまれオークション"という名のオークションを行っている。これは、全店舗の入札数が増えれば増えるほど購入価格が下がるというオークションである。お客の全体数が増えることが、お客にとってもメリットをもたらすという点で画期である。


リピーター顧客を区別しない

 顧客データベースを構築すると、リピーター顧客への差別したサービスをしなければと、考え勝ちである。しかし、まったくリピーター顧客と新規顧客を区別しないという戦略を採っているショップもある。
 旅行代理店の『コスモエアーシステム』(以降、C.A.S)では、新規顧客とリピーター顧客との差別を、一切行っていない。『C.A.S』は、どの顧客に対しても、できる限りの最安値で航空券を販売することに徹している。そのため、リピート顧客を優遇できる余裕はない。リピート顧客もそれに納得して同ショップを利用している。『C.A.S』が顧客データベースを構築する理由は、省力化、効率化のためである。その結果として、商品の低価格化が実現できる。
 同じ顧客データベースを構築するのであっても、どういう使い方をするかはショップごとに異なるはずである。これは、お客にどういうサービスを提供するかに通じる。ショップの価値を決める基本的な部分である。


顧客情報の取扱は慎重に

 お客はショップを利用する場合に、嫌が応にも個人情報を落としていく。この情報が他に漏れるようなことがあれば、ショップの信用は失墜する。犯罪行為にすらつながる。
 お客の個人情報は、慎重な上にも慎重にしたい。お客のデータベースを、誰でも覗けるようになっていてはならない。特に忙しくなり、人が増えたときには、慎重にしたい。お客情報に関する従業員教育を、しっかりやっておくべきだろう。
 また、ホームページやメールで、個人情報の取扱について、プライバシー保護の考えを明記しておきたい。


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