<『商業界』‘2000年8月号掲載>
インターネット・ショップでお客が買物をためらう最初の理由は、不信感である。インターネット・ショップは決してバーチャルではないが、一見バーチャルである。インターネット・ショップが実店舗と比べての最大のハンディは、実在感がないことである。
ショップ側がインターネットでのビジネス開始に不安を抱く以上に、お客はインターネットで買物をすることに不安を持っている。
インターネット・ショップを始める前に、まず、この点をしっかりと認識しておく必要がある。
インターネットの信頼作りの工夫について、考えてみたい。
インターネット・ショップは、無店舗でも構わないわけだが、インターネット・ショップの正体をしっかりと示すことは必須である。通産省では訪問販売法に基づく表示(6月号の(社)日本通信販売協会会員が遵守すべき表示基準に同じ)を義務づけている。義務づけられた所在地情報や代表者名の表示などは、当然行うべきだが、これだけでは不十分である。
実店舗では、店員の顔が見え、店の雰囲気、空気がある。お客はこうした目に見えないもので、店の信頼度を探っている。インターネット・ショップでも、雰囲気や店主の体温を感じさせる仕掛は必要だ。
この店のオーナーはこの人だということを示すために、『おかずのうつわ屋・本橋』では、女将の顔写真を公開している。また、「女将の独り言」というコ−ナ−で毎日の出来事を綴っている(図−1)。こうした何気ない文章で店主を知って欲しいという思いからである。
また、実店舗がある場合は強い。おみやげもの屋の『清川屋』では、実店舗の写真と地図・住所を紹介している。これは、信頼作り以外に実店舗の宣伝効果もあり、一石二鳥である。
図−1『おかずのうつわ屋・本橋』の女将の独り言
信頼は実績から生まれてくる。実績はショップの歴史であるとともに、頻繁にホームページが更新されるという鮮度でもある。鮮度を保つための頻繁な更新が歴史を作る。
『岩城真珠』では、「新しい店よりは古くから開設している店、ページ枚数(内容)が少ない店よりは多い店、更新が少ない店よりはいつも新鮮なお店」が信頼を生むという方針のもとに、家族ぐるみで更新の努力を続けている(図−2)。
これから出店するショップでも、毎日のように更新していれば、ページの鮮度に対する努力は間もなく認めて貰えるし、その積み重ねが歴史になっていく。新しいショップほど、更新の努力をする必要がある。
また、ひとりで毎日更新するのは、かなり大変な作業である。更新作業には、他の従業員や家族を巻き込むことをお勧めする。ひとりで更新するより、楽しくでき、全従業員のインターネットショップに対する協力意識も高まってくる。
図−2 『岩城真珠』で毎日アップしている日記のある一日、
小学生の娘さんが書いた絵日記が掲載されている。
実店舗でも当たり前のことだが、品質の確保は重要である。販売する商品が企画品でない生鮮食品などは、品質が一時的にでも落ちないように気をつけたい。
みやげ物屋『清川屋』の春先の主力商品は山形のさくらんぼである。お客からの「山形の佐藤錦はおいしいのだけど高くて」という声と品質との板ばさみを経験した。そこで、300gセットを特別に企画することで、お客の声に応えた。安さで売るショップでなければ、いかなることがあっても、品質を落とす選択はするべきではない。
しかし、どのように商品品質に気を配っていても、配送上のトラブルなどなんらかの間違いはありうる。配送中の破損や、紛失、間違った商品を送ってしまうミスもあり得ないわけではない。
また、商品特有のトラブルもある。生鮮食料品が配送中に劣化する可能性。衣料品などは、特に試着ができないため、サイズ違い、色や風合いに対するイメージ違いなど、トラブルの起きやすい商品である。
こうしたトラブルが起きた場合に、返品条件をしっかりと設定したい。できれば、返品のための送料などは負担するぐらいの覚悟は必要である。
また、想定した以外のクレームが発生した場合のために、クレームを受け取る窓口を設けておきたい。クレームが来た場合に、最優先で対処することは、言うまでもない。
クレームでトラブルに見舞われた企業がニュースになることがあるが、対応の遅さが命取りになるケースが多い。
クレームだけでなく、スピーディなメール対応、スピーディな商品発送が、何より信頼を作る。
『セコンド・ハンズ・ジュンポ』では、注文に応えるメールの中で、「今日は、そちらは暑いですか」、「ネットでの買物は初めてですか」などの個人に宛てた文面を送ることで、お客との距離を縮めていく。
『田中かばん店』では、メールの中で「モデルの○○さんに会った」とか、「このかばんは△△が使っている」などと話す。有名人についての情報を、さりげなく提供することで、信頼感を築いていく。
信頼を作る最大の味方は、お客の声だ。どれだけ、そのショップの商品をサービスを気に入っているかを語った声をホームページに載せる。インターネットのお客は、実店舗のお客より、ショップの愛顧客になってくれる場合が多い。また、雄弁に惜しみなくショップの魅力を語ってくれる。
インターネットショップの大きなハンディは、お客が商品を手に取って見られないことである。どれほど、たくさんの商品説明を載せても、写真を載せても、お客が納得いかない場合がある。
『田中かばん店』では、お客から「かばんの中を見せて欲しい」や「持つとどう見えるのか」というような問い合わせメールがあると、中を開けたところの写真や、人が持った写真などをメールで送っている。
『セコンド・ハンズ・ジュンポ』では、店内ライブカメラを設置しており、お客からメールで依頼があると、商品を様々な角度で見せるサービスを行っている(図−3)。
とちらも、こうしたサービスは、実店舗で行っている応対をネットに持ちこんだものと位置付けている。
図−4『セコンド・ハンズ・ジュンポ』の店内ライブカメラ、
お客の要望で商品を様々な角度で見せる
前払いにするか、後払いにするかはインターネット・ショップを始める際に、最も悩むところである。
お客は前払いで、商品を送ってくるだろうかと悩む。ショップは、後払いにして代金を回収できるだろうかと悩む。信頼関係の綱引きである。
お客の不安を考えた場合に、どちらが先に手を離すかは、答えは明確だろう。
『家具のアオキ』では、家具という高額商品を扱っているが、それでも「後払いにすれば、代金を回収できないリスクがある。しかし、前払いにすれば、買って貰えないリスクがある。」と考え、後払いを選択している。
また、一部のショップ・オーナーの声によると、一般のカタログ通販よりインターネット・ショップでの未払いは少ないようだ。
これは、カタログ通販に比べ、インターネット・ショップはオーナーの顔が見えているためではないかと思われる。
ショップ・オーナーの顔を写真や日記などで露出させることで、未払いのリスクも低く押さえる効果があるようだ。
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