<『商業界』‘99年6月号掲載>
このところ電車の中や喫茶店のような公共の場所で、中高年の女性がインターネットの話をしている姿も珍しくなくなってきた。
数年前、インターネットの利用者というと30代のパソコン好きの男性達であった。しかし、こうした顧客層が購買するものと言えば、パソコンとその関連商品、音楽CD、本などの商品に限られていた。
市場が拡大するにつれてインターネット・ショップも1万軒を超えた。ホームページを出すだけでは売上げにつながらないという認識も広がりつつある。
インターネットショップも一段上の段階に入ったようである。
インターネットは受注・販売の道具と考えられがちである。
しかし、インターネットが世界中とつながっていることを考えると、インターネットで仕入先を探さない手はない。
子供服店Fellowsは、日本に入ってない子供服の製造メーカーをインターネットで探した。
最初は、香港やイギリスのメーカーとも取引していたが、最近は一番人気のオランダのメーカー1社に絞っている。また、国内の卸で入手することが難しいヴィンテージ品もインターネットであれば探すことは容易である。
川窪万年筆はインターネットを始めてから、ヨーロッパやアメリカの万年筆コレクターとの付き合いが広がった。
コレクターとの関係ができたことから、ヴィンテージ品の仕入幅が格段に広がった。また、万年筆メーカーが毎年出す限定品も手に入れやすくなった。
製造業の場合は、商品開発にインターネットを利用している。
「インターネットで、初めて真のお客の声を聞けた」と言うのは、家具製造の中居木工である。
以前は大手文具メーカーのOEM製造であったため、お客からの直接の声を聞くことはなかった。家具の素材から色まで、お客の声は大変貴重だと言う。(図−1)
造業からインターネットで製造小売への道を切り開いたニットメーカーのインターニットは、お客をデザイナーに変えた。
お客がフロッピーやメールで送ってきた画像データを設計マシンのCADに取り込んで、セーターをパソコンでシュミレートする。
そのセーターをホームページに展示して、今度は電話でのやり取りである。
お客が気に入って初めて、セーターを編み始める。同じくひとりのお客のための商品を制作してメールでお客の意見を伺うのは、岩城真珠である。
お客の要望をメールで聞き、お客の要望に合った商品を制作してホームページで展示する。
お客の名前が大きく入ったホームページはアピール度満点である。
(図−2)
最近は、ホームページだけではなく、定期的なメーリングリストを発行して自店の情報をお客に発信しているショップが多い。
楽天市場は、その時期に合ったテーマを選び楽天市場に軒を連ねるショップの中から商品を選び、メーリングリストで紹介している。
受注の際にお客に入力して貰う情報は、なるべくたくさんの情報をなるべく少ないキーインでというのが理想である。
矛盾したことのようであるが、たとえば、県名はキーインではなく、ポップアップメニューを用意してマウスで選んで貰う。
のしの種類やお届け指定日の有無なども簡単に指定して貰える。
千成もなかは、こうした機能を利用してお届けに関連するサービスを豊富に提供している。
メールでの思い入れのこもった注文に、手元にある商品では応えられないこともある。
ヴィンテージ商品、限定品など手元にない商品でもお客からの要望があれば揃えてしまうのが、川窪万年筆である。
主に40代の男性が学生の頃に買って貰ったが紛失した商品、欲しかったが買えなかった商品を求めてくるそうである。
こうした要望に、インターネットで知り合った海外のコレクターを通じて応えていく。
お客がプレゼントを選ぶ際に最も優先することは、予算と受け取り手の好みである。
こうした条件にかなう商品を選び、見積もりを行っているのはFellowsである。
お得意様に対しては、選んだ商品の写真もメールに添付ファイルで付けて送っている。
インターネットショップでも、買い物の楽しさを提供する仕掛けは重要なことである。
オークションは楽しさを提供するイベントのひとつである。
オークションを行っているのは、リサイクルショップ、中古車など品数の限定された業種でよく行われている。
お客のライフスタイルは時代とともに多様化している。
ライフスタイルが異なると決済方法も多様な方法を提供する必要が出てくる。たとえば、プレゼントにしたいと思ったお客が、いざ決済しようとして代引きしかなければ諦めるしかない。
決済方法は、郵便振込、銀行振込、代引き、コンビニ決済がある。
また、敬遠されていた電子決済もクレジット番号を入れないですむ決済方法が出てきて、実用化が進んでいる。
メールで受注した場合、お客から届いた情報は商品を発送した後も蓄積しておくと、お客に関する個人情報は後々役に立つ。
インターネットで販売するのが難しい商品のひとつが衣料品である。
子供服のFellowsはメールに一言、「うちの子は少し太めだから」とあると注文の商品と大き目の商品の2枚を送る。
「合わない方は着払いで送り返してください」と手紙を付けて。
これで、合わないサイズの商品を送られるお客の不満は消え、Fellowsのファンをひとり獲得する。
川窪万年筆は、こうして溜まった情報でお客を分類している。
川窪万年筆のお客は大きく分けて3タイプである。現行品、ヴィンテージ、限定品それぞれのお客は、きれいに分かれる。
分類したお客に対して、適切な商品情報の提供ができる。メールでのDMはハガキのDMに比べてコストはかからない。しかし、不要なメールを出さないこと。これも重要なサービスになる。また、Fellowsは14.お得意様用のVIPページの作成や、発送商品の中にシールをつけることで15.ポイントサービスでの割引などを行い、固定客につなげている。
さらに、旅館のきらくやは16.メール、電話、FAXでの受注情報を一括管理して、ハガキでDMを出している。最近の傑作は、地域振券ならぬ“ひいき親交券”という割引DMである。
(図−3)
ホームページでお客とコミュニケーションを取っているのは、そば屋の谷津坂屋である。
店主は、そばを打つのに忙しく、また、打ち解けにくい性格もあり、なかなかお客とのコミュニケーションが取れずにいた。
そこでホームページに掲示板を開いたところ、近所の住民の溜まり場になり、オフ会も頻繁に開かれている。
医療関係や法律、税務関係など専門知識が関係するショップでは、メールでの相談窓口は貴重である。
こうした専門店に限らず、相談窓口を用意しておくと、お客の困りごと、考えていることが分かり、次のビジネス展開に役立つ。
サービス業のように実店舗に足を運んで貰うことが目的の場合は、お客が来易くする、がっかりさせない、勘違いさせないことが重要である。
店舗の地図情報、営業時間、価格、提供できるサービスの内容など、こと細かく載せたい。
そば屋の谷津坂屋は特殊な例であるが、数秒置きに店内映像を流し、込み具合をお知らせしている。
さらに、自店の商品・サービスに関連するショップをリンクすることもサービスのひとつである。
ワインショップで肉屋のショップをリンクして、ワインとステーキの組み合わせを提案しているケースもある。
<<文中のホームページのURL>>