<『商業界』‘2000年6月号掲載>

ネット繁盛店のビジネスモデル
−業種・商材に合ったビジネス展開−

 ネットショップの繁盛店が続々と登場している。様々な商品を販売しているが、どうやって商品を選定し、どうやって売っているのだろうか。
 インターネットショップを出店している企業や店は、どのような業種で何人体制でネットショップを運営しているのだろうか。どの程度の売上を上げているのだろうか。
 ネット繁盛店の実態に様々な切り口で迫ってみた。ここで、自店に近い事例企業を探し出し、詳しくは事例紹介をご覧頂きたい。

●少人数体制で機動力発揮

  日本での繁盛店は、米国に比べ規模の小さいところが多いと、よく言われる。これを証明するように、経営者自らがネット従事者となっているショップは少なくない(図表−1)。個人が無店舗で立ち上げたショップもある。ネット従事者も1名から6名までで、今回の事例では、数十名という例は見当たらない。
 年商は、人数が多くなるにつれて高くなっている。最初、ひとりで始めて売上が伸びるにつれて増員したケースと、最初から数人体制で始めた場合がある。
 数人体制であれば、意思統一も図りやすく、機動力もある。そのため、新しいことがすぐに始められ、インターネットのスピードに合っている。今後、売上が大幅に伸び、体制が大規模になってきた場合、機動力が落ちないように気をつける必要があるだろう。
 また、ネットショップの出店者は小売業者以外にも卸や製造業、あるいは個人など多彩である。それぞれの状況に応じたビジネスを展開している。


ショップ名 出店者(注1) 出店者分類 ネット従事者 年商(万円)
(注2)
客単価平均
(円)
いい紅茶ドットコム 無店舗 無店舗 1 1,200 4,000〜
  5,000
スーパーフィッシングワールド バス釣りプロなど 1 9,000 7,000
ネオウィング エンジニア、出版社 14,000 7,000〜
 1万3,000
1STフラワーショップ 草月流二級師範常任参与 1,800 3,500〜1万
珈琲の王国 珈琲豆自家焙煎専門店 小売店 1,350 3,200
サノヤ酒店 酒販店 3 5,500 8,000
パッション・ワイン ワイン専門店 1 6,000 1万5,000〜
    2万
インテリアクレール カーテン専門店 2 2,200 6万円
小泉糀屋 糀・味噌の製造小売店 製造小売 1,000 約4,000
川窪万年筆 万年筆の製造・販売店 2,400 2万
大野水産 築地市場の水産中卸 卸・その他 1,500 6,000〜7,000
てるくにでんき 照明機器の卸会社 2 15,000 5〜8万
ナチュラム 釣具・アウトドア用品卸販売具 4 25,000 1万2,000〜
 1万5,000
特価COM ソフト開発会社 6 120,000 3〜4万円
播州ハム 食品加工会社 製造・加工 4 2,000 6,000
Tギャラクシー Tシャツメーカー 3 4,268 5,000
ダイシン スラックス等の製造・卸会社 2,000 5〜6万
ボウシ.コム 制服等のネーム加工店 2 1,200 3,000
岩城真珠 真珠卸・加工 2 4,000 1万6,000
(注1:出店者は、現在そのまま続いていないもの、オーナーがかつて勤務していた企業・店も含む。)
(注2:年商は、見込みを含む。)



●強い商品を提供

  ネットショップの成否を決めるのは、商品選定と言ってもよい。
 各ショップでの販売商品を見てみると、各企業(店)の状況で提供できる最も強い商品を出していることが分かる(図表−2)。

◎新たな仕入ルートを開拓
 『いい紅茶ドットコム』と『サノヤ酒店』は、ネットショップを開設するにあたり、新たに仕入ルートを開拓している。特に、『サノヤ酒店』は仕入の難しい地酒を扱い始めたが、「ネットショップであること」が、仕入開拓に強みとして働いた面白い例である。
 既存店としての実績がなくとも、ネットショップを開設したい個人や、新たな商品を扱いたいと考えている既存店の店主には参考になる例でだろう。

◎ネット以前の実績が仕入力に
 『珈琲の王国』、『パッション・ワイン』、『大野水産』は、ネットショップ開設までの資産を、仕入に大いに生かしている。
 『珈琲の王国』、『パッション・ワイン』は、それぞれネットショップ開設以前に、珈琲専門店、ワイン専門店としての長い実績がある。仕入ルートはもとより、商品の保存方法にノウハウがあるため、最高の状態の商品を提供できる。『大野水産』は、築地の卸が出店者であるため、自企業だけでなく築地市場全体が強力な仕入機能、在庫機能を提供している。

◎品揃えと技術が商品力
 『てるくにでんき』、『インテリアクレール』、『特価COM』は、特に特徴のある商品を仕入れているわけではないが、それぞれ照明器具、カーテン、パソコン関連に絞り込んでいる。
 『てるくにでんき』と『特価COM』は、在庫を持たず、受注発注方式で圧倒的な品揃えを展開している。
 また、3ショップとも、アドバイスがなければ売り難い商品である。各ショップともネット上または、ネット外でのコンサルティングが強力な商品力を作り上げている。

◎自信の製造技術で健康志向食品を提供
 『播州ハムほりほり支店』や『小泉糀屋』は、持ち前の製造技術を駆使して、味はもちろん無添加・天然を前面に出し、昨今の健康ブームに対応している。こうした特徴ある食料品は、お客に一度味を覚えて貰いさえすれば、リピートにつながる。また、ギフト商品にできることも、極めてネットショップでは強い商品である。
 独自の食品を提供している製造小売店は、これらの例を参考に自信を持ってインターネットに進出して欲しい。

◎独自の売り方で衣料品を売る
 衣料品はネットショップで売るのが難しい商品のひとつである。しかし、オーダースーツさえ、ネットで売れることを証明したのが、『オーダースーツ・ダイシン』である。当ショップは、既存のビジネスでオーダースーツが主力商品であった。一般に、ネットショップを開設するのに、ネットに向いてない商品であれば、迷うところである。一見、向いてないと思える商品でも従来の主力商品をネットに持ちこみ、成功した例である。
 『ボウシ.コム』の出店者は、刺繍店である。「どんなものにでも刺繍します」という方向がストレートであるが、「刺繍」ではなく「帽子」という商材を中心に据えた。「帽子」という分かりやすい商品に方向を変えたことが勝因となっている。
 『T-GALAXY.COM』は、Tシャツメーカーの始めたショップであるが、製造業の強み弱みを知りぬいたビジネスを展開している。オリジナルTシャツは、すぐに出てくる方向であるが、当ショップはそれだけに終わっていない。デザイナーや販売ショップと、インターネットの上での提携を盛んに行っている。
 3ショップを見ると、衣料品を売るには一工夫も二工夫も必要であることが分かる。

◎こだわりと加工技術で日用文化品を売る
 『1STフラワーショップ』は個人が開設した無店舗ショップであるが、オーナーの萩本さんは草月流二流師範である。
 『岩城真珠』オーナーの岩城氏は伊勢志摩の卸出身で、真珠の強力な仕入ルートに加えて加工技術を持っている。
 『川窪万年筆』の出店者は、万年筆の製造・販売店であった。オーナーの川窪氏は職人でもあり、加工技術も商品力を支える要因となっている。

●多面的な顧客サービス

  ネットショップでのサービスはメール、メールマガジン、サイト(ホームページ)、インターネット以外の方法と実に多面的に行われている(図表−3)。ネットショップとはサービスを売る店であることが、よく分かる。

◎メールマガジン発行は常識
 繁盛店ともなれば、ほとんどのショップが頻繁なメール交換を行い、メールマガジンを発行することも常識となっている。
 その中でも、特にメールを使った特徴あるサービスを行っているのが、『1STフラワーショップ』である。ギフトの場合、送り主に商品が見えない欠点をギフト商品の画像をメールで送ることで解消しており、これが評判のサービスとなっている。
 『てるくにでんき』や『インテリアクレール』にとっては、メールはコンサルティングを行う強力なツールである。
 『播州ハムほりほり支店』では、メールマガジン限定の特売を行っている。『オーダースーツ・ダイシン』では、メールマガジンでプレゼントつきのクイズを実施した。『パッション・ワイン』では、メールマガジンとメーリングリストを使い分けるというきめ細かさを見せている。

◎サイト技術を戦略的に使う
 サイト上での情報提供は盛んに行われている。また、投票などもエンターテインメント性を提供するために、広く行われている。
 オークションやシュミレーションは実現するのに、ある程度の技術が必要である。一般に、商品を販売するのに高度な技術は必要ない。しかし、『川窪万年筆』のオークションや『ボウシ.コム』のシュミレーションは、各ショップの商品特性とマッチしている。サイト技術もむやみにではなく、戦略的に利用していることが分かる。

◎インターネットの外でもサービスを
 インターネットの外でも、『パッション・ワイン』のオフ会(ワイン会)や『小泉糀屋」の「手作り味噌講習会」、『オーダースーツ・ダイシン』の「展示採寸会」など、商品に合った形で様々なサービスを実施している。

●多彩な決済手段提供が主流

  ほとんどのショップでは、郵便振込、コンビニ決済、代引、銀行振込、スマッシュ、アコシス、アイレジ、クレジットカードなど多様な手段を採用し、お客の利便を図っている(図表−4)。
 郵便振替や銀行振込では、後払いが主流である。その中でも、先払いにさせる工夫も見られる。『いい紅茶ドットコム』では「10%引きのプリペイド会員制度」を導入している。『てるくにでんき』では、「セブンイレブンの先払いシステム」を利用したお客には消費税分を割り引きにしている。どちらも、お客にもショップにもメリットがある方法を提供して、受け入れられている。
 また、サラリーマンのお客の多い『オーダースーツ・ダイシン』はコンビニ振込が多く、高額商品を扱う『岩城真珠』はLIVUY(VISA・マスターカード)が多い。決済方法の選択に顧客層や商品特性が反映されており、興味深い。

●アピールポイントは商品力と親切対応

  これらの繁盛店をお客の側から見た場合に、何が魅力なのだろうか。総合評価はお客の視点で見てみたい。
 まず、目につくのは商品力及び価格力である。さらに、一般的な商品の場合には、アドバイスできる専門的な商品知識が必要であることが分かる。
 それに加えて、メールなどでの親切な対応、楽しいページづくり、多彩な決済方法だろう。
 繁盛店とは、仕入、売り方、決済、顧客サービスのすべてが、ベストウェイの結集であることがよく分かる。
 また、それぞれの企業状況・規模に応じたビジネス展開をしていることも分かる。今後、繁盛店を目指す店は、小規模であれば商品を絞りこみ、小人数で運営できるやり方、中規模であれば、規模・業種に応じたビジネスを考えて頂きたい。


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