<『月刊流通ネットワーキング』2000年4月号掲載>
情報技術で"個客"と交流
~PALTEK(半導体商社)~
今日の危機的状況とも言える売上低迷の中で、「顧客の顔が見えない」と嘆く経営者は多い。
そこで、これまで注目されることのなかった営業というフロントオフィスを対象とした改革が始まった。それが、SFA(セールス・フォース・オートメーション=営業支援システム)である。
SFAも最近の流行りであるITブームの流れの中から出てきた情報システムのひとつと、捉えられがちである。しかし、営業部門は顧客と直面した部門であり、どういう営業形態を採るかは、経営戦略と深く結びついているべきものである。
単にSFAというソフトウェアを導入しただけでは、「顧客の顔が見える」わけもない。
新横浜駅の正面に本社のあるPALTEK(代表:TEL:045-477-2000)は、1982年に創業した半導体商社である。創業した当時は、資金力も営業力もなかった。そこで、顧客ニーズを掘り起こすことにより、ビジネス・チャンスを掴むことを考えた。
一人ひとりの設計者に対応
主力製品のPLD(プログラマブル・ロジック・デバイス=特定用途向けの集積回路)は、個別ニーズに応じたプログラムを書きこんで提供する製品である。従って、潜在顧客である「設計者の個別ニーズ」を知ることが最大のポイントだった。個別ニーズを把握するために、顧客とコミュニケーションを取りながら営業効率を上げる手段として、情報システムにたどりついた。そのため、当社のSFAは既存のパッケージではなく、社内でAccessを使って開発したものである(図−1)。
この仕組みの成果で、創業当初数人であった企業が、今では170名の中堅企業に成長した。
当社がこの仕組みを作り上げるまでは、試行錯誤の繰り返しであった。当初、顧客名刺を集め管理するのは、各営業担当者の役割だった。
あまりにも多い名刺の数に、パソコン活用を考えた。DOSパソコンの簡単なカードデータベースに、名刺情報を入力してみた。しかし、入力ルールも決めずに作り上げた顧客管理データベースは、使えるものではなかった。
そこで、ルールを決め顧客管理データベースを再構築する過程で、営業支援を行うPDR(パーソナル・データ・リサーチ)チームを作りあげた。
システムを作っても、そのシステムを全社に浸透させるのは、容易ではない。
社長が号令をかけ、上司が顧客情報入力の指導を絶え間なく続けた。現在でも、経営会議では管理職が営業支援システムの活用についての成果発表を行い、営業支援システムを育て続けている。
ここで当社の営業体制について見てみる。
当社の営業チームは製品や顧客別に約20の担当チームが存在する。
その営業チームを支援するのが、PDRチームである。PDRチームはコールセンターの役割を中心に顧客管理データベースを基にした営業支援を行う(図−2)。
PDRチームは設計技術の教育も受けているため、顧客データベースに登録された潜在顧客に対して電話をかけたり、電子メールを送るなど、ランクと効果に見合う販促手段を取っている。
<図−2 PALTEKの営業体制>
当社ではセミナーや展示会のほか、あらゆる機会をとらえて名刺を収集する。この名刺の情報及びいつ、どこで会ったかの情報まで、すべての設計者をCランクの顧客として登録する。相手が設計者以外の場合はXランク、事業部長などの重要人物の場合はZランクとして区別する。
Cランクとして登録されると、PDRチームが販促計画に従って、最初の電話をかける。電話での会話の内容は、すべて顧客データベースに登録する。
ここで、「製品や性能に関する問い合わせがあった」などの具体的な動きがあれば、営業担当チームに知らせる。営業担当チームとPDRチームで協議してCランクの顧客をBランクに昇格させる。さらに、相手との商談が次第に固まってくるとAランクに昇格させていく(図−3)。
すぐに商談に結びつかない場合でも、会話の中で相手のスケジュールが分かれば、「次回はいつ電話をかけるべきか」といった次のアクションを「アクション・キーワード」として登録する。
こうした顧客との接触状況がすべて顧客データベースに登録され、個々の顧客の状況が細かく把握できる仕組みになっている。
また、営業チームが対応を怠っていると、PDRチームが催促する場合もある。PDRチームは、営業チームに対して司令塔の役目も果たしている。
<図−3 ランク別顧客管理>
顧客データベースにCランクとして登録された顧客が、最初の段階でBランクに昇格する確率は約20分の1である。その他のCランクの顧客に対しては約半年ごとに、PDRチームが電話やメールで接触する。これは、相手の役職名や連絡先を確認して、顧客データベースの精度を維持するためと、現在の課題や個別ニーズを聞き出すためである。
さらに、PDRチームは各営業チームと協力して、絶えずテーマを設けて販促活動を実施している。
顧客管理データベースは作っただけでは、すぐに使い物にならなくなる。常に活用しながら更新していくことがポイントである。当社では顧客管理データベースを糠床と呼び、こまめに手を入れている。
当社では「アメーバ経営」で、各チーム単位での利益を管理している。各チームごとの売上や仕入れ価格、粗利、経費、労働時間などから各チームの利益を算出して利益管理を行っている。PDRチームも管理の対象である。
各チームの業績はパソコンで日次で見ることができるほか、1人1時間当たりの利益は、月次で見られる。
これは、同じ社内でも営業効率を考慮せずにPDRチームの支援を受けると、収益に影響するという意識を持って貰うという狙いがある。
当社はSFAシステムを含む優れた営業手法の効果で、半導体不況の中にあって大きく業績を伸ばした(図−4)。
現在、設計者個々人を対象に顧客管理を行っているが、これをさらに設計プロジェクトを対象にしたデータベースとの連携も図っていく予定である。
また、当社の優れた営業支援システムには、ホテルや不動産業界からも問い合わせが相次いでおり、この営業支援システムの導入コンサルティングも、新たなビジネスとして開始している。
(問い合わせ先:TEL:045-477-2007)
<図−4 PALTEKの売上高と経常利益の推移>