< 『にいがた商工連ニュース』2001年8月号掲載>
<長野県の金型メーカー―八幡工業>
製造業は、東南アジア諸国への生産シフトで厳しい状況にあります。金型業界もデジタルエンジニアの進展により金型試作の減少で受注が減少しています。
八幡工業は、長野県更埴市にある社員4名の金型メーカーです。8年前から3次元モデリング(3次元で形状を作成することで、作成された形状はモデルと呼ばれます。)を中心としたプラスチック金型設計と金型部品加工を開始しました。現在取引先との強固な信頼関係で、仕事は2ヶ月先までいっぱいです。赤沢武宏専務が中心になり3次元CADの導入と設計技術の習得を進めてきました。
3次元モデリングによる同時並列的(コンカレント)に金型を設計・製作していきます。
取引先からは、3次元モデリングによるデータをネットでもらいます。また、チェックもネットで行います。複雑なコンパクトカメラの一体金型も高品質にまた短納期で仕上げることができます。
社内のNCマシンやワイヤーカットなどの加工設備は、LANにより結ばれています。設計データを徹底的に再利用できる仕組みができています。これにより設計データを加工データに変換することができ、データの再入力が必要ありません。こうした同時進行の仕組みが、短納期で高品質な金型の設計、製作を可能にしています。
今までは、最後の仕上げで寸法を合わせこむことが金型職人の匠と云われるゆえんでした。しかし、現在は加工で精度が出せるため、仕上げは加工面に沿って正確に仕上げることが求められます。まさに、匠とIT技術の融合といえるでしょう。 図表−1 3次元モデリング例
図表−2〜4
(注:パワーポイントをお持ちで、IEの方のみ、ご覧になれます)
<岡谷市のベンチャー企業―桜企画>
http://www.city.okaya.nagano.jp/cdrom/
(上記ページに入り、桜企画を探してください)
短時間で立体モデル作成
桜企画は、長野県岡谷市にあり、3次元CADを活用した光造形による立体モデルを作成しています。今、大手メーカー各社は、製品開発のスピードアップに必死に取り組んでいます。その際ネックになっているのが機械加工による形状確認です。桜企画は、この期間を劇的に短縮しました。開発期間短縮のため3次元CADの導入が進んでいますが、機械加工で試作をしたのでは1ヶ月もの期間がかかります。これではメーカーが設計期間の短縮した成果が出ません。その課題を解決したのが光造形による立体モデリング装置です。光造形装置は、エポキシ系液体樹脂にコンピュータで制御したレーザー光を照射して樹脂を硬化させ積層で造形します。
3次元CADデータ(STLデータ)は、メールに添付されて送られてきます。これを光造形装置用のスライスデータに変換します。
桜企画は、精密造形品を中心に製作しています。このため光造形装置は、温度管理された部屋に置かれています。社内LANによりネットワークが構築されているため、宅配便との連携により本州であれば翌日には納入することができます。また、翌日午前10時の時間指定ができます。このシステムにより着実に顧客を増やしています。
量産品の生産は、海外の工場に出て行ってしましました。しかし、開発試作、少量品の生産は今後も国内が中心になります。多品種少量生産に対応した取り組みが日本の製造業の課題です。光造形による立体モデル作成は、試作品のみならず製品生産としての役割も果たしています。
大手企業の設計環境は、3次元CADに移行しています。これからの金型製造業は、3次元モデリングからの金型設計が求められます。また、立体モデリングの光造形システムは、試作品の短納期化に寄与しています。IT機器により製造業の環境が変化しています。紹介しました2社は、環境変化に対応し小さいけれどもIT活用により他社との差別化に成功した事例です。これから製造業が生き残るためには、IT活用で何ができるのかをよく見極めることが重要です。そしてIT化できるところから進め、技術習得していくことが必要です。
| 青木悠子からのメッセージ |
金型企業が短納期化を実現するためには、IT化と最新の加工機械の導入がハード面での条件でしょう。しかし、こうした機器を使いこなすためには、人材の育成が欠かせない条件になってきます。経営者を中心とした全社員が高度な情報リテラシーを持つことが、金型企業の生き残りの条件と言えます。