< 『にいがた商工連ニュース』2001年5月号掲載>
事例に学ぶIT活用のポイント
〜インターネットでわが子をチェック!
e子を育てる託児所−2回目〜
執筆者 二瓶哲
<東京都の託児ルーム-マグハウス>
幼児虐待死! 昨年、神奈川県大和市で起きた事件は記憶に新しいことと思います。この託児所では、預かった幼児約60人のうち実に3割以上がけがをしているなど、虐待は日常的だったとみられています。悲しいことに、今年の3月には東京都豊島区の無認可託児所で、生後四ヶ月の赤ちゃんの顔の上に別の八ヶ月の男児が覆いかぶさっていたため、窒息死してしまうという事故が起きました。
子どもの命を預かる無認可託児所の安全性は確保できないものでしょうか。
インターネットを活用した安全対策
東京都目黒区にある「マグハウス」は、子どもの安全という親の切なる要望に応えている無認可託児所です。マンションの1階に立地し、壁面はガラス張りなので、外から中の様子を伺うことができます。中は清潔感にあふれ、可愛らしい内装となっており、「暗い」、「汚い」、「閉鎖的」という託児所のイメージをすっかり払拭しています。
「マグハウス」には、全ての部屋に手のひらサイズの小型カメラが設置されており、常時、子どもの活動状況をインターネットを通じて発信しています。親はいつでも、どこでも、ホームページにアクセスすることにより、10秒に一度更新される画像を通して、わが子をチェックすることができるシステムとなっています。
また、託児所内には、ベッドルームの状況を把握できるようにテレビモニターが設置されており、保育スタッフはモニターを見ながら異常を発見でき、直ちに対処できるようになっています。このシステムにより、事故を未然に防ぐことができるとともに、何より親に「安心感」をもっていただける点がポイントです。
インターネットの大きな特長として、「情報の即時性(リアルタイムな情報を提供できること)」が挙げられますが、「マグハウス」はこれを最大限に活用し、親と保育スタッフによるダブルチェックの体制で子どもを守ることができるようになっています。
これらのサービスは大変評判が良く、固定客の確保とともに、他の託児所との差別化につながっています。我が国におけるIT(情報技術)の普及が進むにつれ、今後「マグハウス」のようなサービス形態の評価は年々高まっていくことでしょう。
異業種ネットワークこそビジネスチャンス
「マグハウス」の経営者である久保田桂子さんは、人材育成や地域活性化のコンサルタントとして全国を飛び回っている方です。仕事を通じ、「子供は欲しいが、仕事を辞めるわけにもいかないので産むことができない」という悩みを抱えている数多くの既婚者と出会い、「安心して育児できる環境を提供することで、働く女性を何とかサポートしたい」という使命感を持つようになりました。中でも、安全対策のアイデアについては、セキュリティシステムを安価で提供できる事業を日本で展開する計画を立てていたオーストラリア人と、IT業界で活躍している起業家とのネットワークから出てきたそうです。このように、一見、まったく関係のなさそうな業種同士がジョイントすることにより、それまでには考えられなかった新しいサービスを創り出したのです。これは、異業種ネットワークが新たなビジネスチャンスを生み出す典型的な例といえましょう。
親のネットワークづくりが課題
子育てには悩みごとや苦労がつきものです。特に、初めての子どもとなるとそれは計り知れないものです。主婦が「ママさんサークル」に集うのも、こういった悩みを打ち明けたり、励まし合ったりするためなのかも知れません。「マグハウス」にわが子を預けるのも同様で、今後、子育てネットワークに対するニーズはますます高まるものと思われます。
インターネットの特長は、「情報の即時性」に加え、「情報の双方向性」が挙げられますが、久保田さんは「現在のホームページをリニューアルし、掲示板などのコミュニケーション・スペースを設置することで、親同士がインターネット上で悩みを相談し合い、解決する仕組みづくりを確立したい。そして、子供も親も快適な育児生活を送ることができるようサポートしていきたい」と意気込んでいます。子育てネットワークの設立は、単に育児に関する情報交換の場ができるだけでなく、実際に親同士が顔を合わせ、子育てについて話し合うなど、極めて人間的なつながり(ヒューマンネットワーク)がつくられるだけに、インターネットの持つ可能性は非常に大きいといえます。
インターネットによって皆に見守られながら、すくすく育ち、「e子」に育って欲しいものです。
<ワンポイント>(by 二瓶 哲)
リアルタイムな情報ほど価値の高いものはありません。それゆえに、利用者は、いつでも、どこでも、その情報にアクセスしたくなるものです。最近では、携帯電話によるインターネット利用者が急増しています。このため、情報発信者としては、パソコンのみならず、あらゆる情報機器によりアクセスできるような環境づくりが求められてくるでしょう。
ITは消費者に最も利益をもたらすものと、言われています。今回の事例は、それを実証するような例です。今までは、預けた幼児は託児所に任せきるというのが常識。預けている間の子供の様子を見たいと思っても、「不可能なこと」でした。それが、ITという新技術の登場で可能になったわけです。消費者の立場の優位性向上、新技術による新サービス、ブロードバンド技術の進化など、あるゆる要素がからんだ面白い事例です。
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