<『ファッション販売』‘2000年5月号掲載>
「ぼくは衣料品の中でもTシャツが好きなんです。インターネットは自分の好きな商品を売って売れる夢のような世界。」とインターネットショップ・イージーの岸本栄司社長は言う。
岸本氏は、京都にある実用衣料品の老舗「岸本屋」の三代目である。イージーは、'95年の阪神大震災でインターネットの威力を実感した岸本氏が立ち上げたショップである。'97年には、インターネットの将来を確信して、無店舗販売に踏み切った。
岸本氏とTシャツの付き合いは長い。学生時代より、Tシャツにこだわり続け売ってきた。その長い関わりの中で見つけた丈夫で安いTシャツを、イージーでは主力商品として扱っている。
商品説明のページを開けると、Tシャツについて、ここまでと思うほどの説明がされている。まず、岸本氏が現在扱っている主力Tシャツに賭ける思いが、エッセイ風に綴られている。『ぼくは今、web通販に人生をかけている。かけるに値するTシャツをみつけたん
だ。このTシャツの販売に自分のすべてをかけたんだ。喜んでもらえるTシャツをも っともっと売りたいんだ。』という具合である。
この思い入れ、こだわりがお客の心を捉える。「買ってみたい」という気にさせる。
岸本氏は、このTシャツの魅力を着心地のよさと品質だと言う。着心地については、岸本氏が何年もかけて探したTシャツの中で、最高のもの、他のTシャツは全部捨てたとまで言い切っている。それだけで十分な説得力である。
品質については、Tシャツを裏返した大きな写真を出している。ちょうど、襟から肩にかけての部分の縫い代が縫いこんである。一番ほつれ易い部分を補強してある。品質を語るのに、これ以上の説明はない。
岸本氏の一番のこだわりは、白のTシャツである。一番着て欲しい商品とも言う。この白のTシャツを売るために、「2枚組白特別価格」を設定している。
もちろん、白以外に25色もの色、サイズも4サイズを取り揃えている。
衣料品を売る場合に、色やサイズは大きな壁である。色はパソコンの画面によって異なる、どんな精密な写真でも画面の色合いの違いは避けられない。
もし、お客の思いと異なる色だった場合、返品手続きにコスト、手間がかかる。それ以上に、お客をがっかりさせたダメージは大きい。それを避けるために、イージーでは、色見本の他に、色を言葉で説明している。『フオレストグリーン(英国車で使う色)』、『エスプレッソ(自然の木の色、こげ茶)』。この細やかさが衣料品をインターネット売ることを可能にしている。
しかし、それでも衣料品での返品は避けられない。紙カタログでの通販でも、衣料品の返品は常識としてある。まして、紙カタログでの写真より劣るホームページ画面での販売である。
最初から返品があることを前提にするのとしないのでは、対応は違ってくる。
イージーの今までの販売枚数は1万3千枚、そのうちの返品・交換は550枚、4%だという。イージーでは返品・交換を前提とすることで速やかに対応できる体制を整えている。
また、イージーのトップページでは、お客のご意見を受け付けている。お客からのクレームに対しては、最優先でお応えしている。インターネットの世界は、口コミの世界。クレームを積極的に受け、速やかに対応することで、いい口コミを生むことを岸本氏は熟知している。
そして、岸本氏のこうした態度がリピート率60%という数字を確保している。
イージーでは、クレーム対応だけでなく、すべてがスピードを伴って行われる。注文するや否や、お礼メールが、商品が届く。このスピードが感動を生む。
魅力ある商品でお客を掴み、お客を喜ばせる仕組みを作る。そして、高いリピート率を
確保する。こうしたストーリー性のあるビジネス展開が、イージーの繁盛の秘訣である。
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