<『商業界』‘2000年1月号掲載>
●電話応対が変わった日
図−3 CTI製品
「鈴木さん宅に、ある日急に友人が大勢で遊びに来ることになった。めったに出前を取らないが、急なことだったので宅配ピザを注文した。初めての注文だったが、町名だけ言うと、店員は『郵便局の裏ですね。』と答え、詳しい場所の説明は不要だった。不思議に思ったが、場所を説明する手間が省けて助かったと思った。」
「山本さんは、いつも同じS書店で書籍を購入している。S書店は勤務先や自宅からやや遠いため、インターネットや電話で注文することも多い。タイトルが分からない場合は、どんな本があるか調べるためにインターネットで注文する。はっきりタイトルが分かっている場合や、外出先から急いで注文する場合は、電話のことが多い。
インターネットの場合は、最初にパソコン画面に住所や電話番号、決済方法を入力したが、次からは名前と電話番号だけでよい。しかし、電話の場合は、その都度住所や電話番号を聞かれるので面倒だった。
ところが、ある日電話すると、いきなり『山本様でございますね。いつも、ご注文頂き、ありがとうございます。先日、インターネットでご注文頂いた書籍は昨日発送させて頂きました。』と言われた。また、住所も変更はないかと聞かれただけだった。山本さんは急に応対が変わったので驚いたが、便利になったと喜んでいる。」
この二件のできごとの裏にあるものが、CTI(コンピュータ・テレフォニィ・インテグレーション−パソコンと電話がつながったもの−)である。
●CTIとは
電話の歴史はすでに新しいものではない。パソコンも、そろそろ私たちの生活や仕事に根づき始めている。しかし、このふたつが連携すると、まったく新しいサービスが提供できるようになる。
具体的に、パソコンと電話がつながるとはどういうことなのだろうか。
物理的には、主装置という通信機器に電話とパソコンをつなぐ(図−1)。そうすると次のようなことができるようになる。
図−1 CTIの構成例
@ 電話をかけてきたお客の電話番号、名前、住所、今までの購買履歴がパソコンの画面に表示される。(図−2)
A 地図機能をつけて、電話をかけてきたお客の住居や事務所の位置が地図上に表示される。
B 初めてのお客の名前や住所、電話番号が表示できる。
C 不在時にかかってきたお客の情報を記録しておくことができる。
D 不在時に、開店時間、休店日などの簡単な問合せであれば、自動応答するように設定できる。
E インターネットでの注文情報と電話注文情報、FAX注文情報を同じデータとして管理できる。
こうした電話の高度な機能は、すでに大企業では取り入れられている。銀行・証券会社などの金融機関や保険会社、パソコンメーカーなどは、いわゆるコールセンターで、CTIの機能を駆使したサービスを競っている。
しかし、一昨年あたりから小規模企業向けに30万円程度からの安価なCTIシステムが出始めた。一部の小売店では、すでにCTIを導入し、先進的なサービスを開始している。
また、自店でCTIを導入する以外に、コールセンター機能を提供するサービスも出てきている。
製品名 ソフト提供元 機種名 メーカー名 用途 顧客名人 中国日本電気ソフトウェア SOLUTE300 NEC 顧客管理 SMILEα/CTI 大塚商会 − − 販売管理 通販SHERPACLUB ミック ISS/CCS/ボイスフレンド 富士通 通販業 BIGMAPforCTI イリイ ISS/CCS/ボイスフレンド 富士通 地図DB連動 同上 − パナホンDSUI 松下通信工業 同上 同上 − CTiOX/Freera/DISCOVERY2000 沖電気工業 同上 CAFIS連動通販向けコールセンター ジィ・シィ企画 PX-3000 日通工 無店舗販売 CUSTOM500 日立中部ソフトウェア CX/MVシリーズ 日立製作所 販売管理 Nexcute 岩崎通信機 SOABLE/SAVAJU/RECENTAGE 岩崎通信機 受注管理 テレパット アトラス技研 αシリーズ NTT SOHO向け電話受注 CTI SHOP.COM :CTI情報提供のページ
図−4 CTIのメリット
●CTIのメリット
小売店がお客に対して、新しいサービスを提供していくのに、情報システムは強力な味方である。POSシステム、ポイントカード、インターネット、どれも先駆けて取り入れたところほど、大きな成果を得ている。
CTIは、どういうメリットがあるのだろうか。実は、CTIはPOSシステムとポイントカードやインターネットとも関連を持っている。これらは、どちらも個客対応の道具という扱い方をされてきた。
しかし、個客サービスの究極は人間の応対ではないだろうか。
POS情報は過去のデータであるとは、すでに誰もが知っている。カードと組み合わせて、誰が何を買ったかの情報が取れるようになった。しかし。いくら取ったところで、情報が役に立つのはその情報を使うときである。それも、個別のお客に向けて人間が電話口で使ったとしたら、効果は確実であろう。
ポイントカードも、現在、いくらポイントがたまっているのか、お客は知りたいと思うだろう。ポイントサービスの内容について、電話での問合せサービスを行えば、サービスの価値は増してくる。
ここにあるのは、顧客を管理することから、顧客とコミュニケーションを取ることへの方向転換である。
では、ワン・トゥ・ワンのコミュニケーション・ツールと言われている電子メールはどうだろうか。インターネットが浸透しているとは言え、場合によっては電話で注文するほうが早いこともある。高齢者は、まだまだ電話やFAXで注文する場合が多い。インターネットで注文したいとホームページを見ても、電話で問い合わせたいこともあるだろう。しかし、電話だけでは顧客情報の管理は容易ではない。また、インターネットと組合わせることでさらに大きな効果が出てくる。
CTIのメリット・
◎初めて電話をかけてきたお客の情報が即座に取れる。(入力の必要がない)
◎ 混んでいる時間帯にかけてきたお客の電話番号を記録 して後でかけ直せる。
◎ 住所や電話番号を聞く手間が省ける。・ 商品の種類の確認が確実で楽になる。
◎ 購買履歴が分かるため、新商品のお勧めが的確にできる。
◎ アルバイトでも新規のお客と固定客に同じ対応ができる。
●CTIの活用方法
では、小規模の小売店・企業でどういった使い方が考えられるだろうか。
活用方法1)
地図システムと組み合わせて、宅配に利用しているピザ屋の例は典型である。同じような使い方で、そば屋、仕出し弁当屋などの出前に利用できる。
専用の電話番を置かなくとも、今までどうりの電話対応でよい。従来の電話だと、名前から住所まで詳しく聞かなければならない。CTIのシステムによっては、初めてのお客からの電話でも、お客の名前、電話番号、住所と位置までパソコン画面に表示される。詳しい情報を聞き出す手間が省けるだけでなく、固定客に対しては、「いつものあれ」で通じる。また、誰が電話に出ても、重要なお客だと一瞬にして分かる。
活用方法2)
同じように地図を使った活用方法で、LPG店や水道屋などの修理業務での活用がある。お客から電話がかかってきた場合に、一番近くにいる修理技術者に連絡をとり、一刻も早くお客のもとに駆けつける。
医療器具の修理など、緊急を要するような商品についても、地図情報との組み合わせの効果は大きい。
活用方法3)
米屋や酒屋などで、配達・通販に利用する方法もある。米屋などでは、よく米びつ管理を行う。パソコンで米びつ管理を行えば、そろそろ御用聞きをすべきお客に自動的にダイヤルしてくれるような芸当も可能である。
活用方法4)
スーパーなどで、通販への利用もすでに始まっている。健康食品、おとな用おむつなどの在宅介護用品店に直接買いに行きにくい商品を通販で取り扱っている。こうした商品は、リピート客が多い。お客情報をその都度聞かなくてすむことは、店側にとっても、お客にとっても利便性は大きい。
ここまでは、自社で小規模のCTIを導入する活用方法である。CTIは、自社で持つ場合と専門業者に依頼する場合がある。
次に専門業者に依頼する場合を考えてみたい。専門の電話応対の教育を受けたオペレータが自店の窓口となり、受注、商品説明、苦情窓口を勤めてくれる(図−5)。ひと月に40万円程度の費用がかかるが、優秀な営業マン・店員を雇う以上の効果が期待できる。
活用方法5)
無店舗販売のインターネット通販を考えてみたい。すでに成功している例であれば、年商1億円を超えるところもある。そこで、受注体制が間に合わず、人を増やす場面が出てくる。ここで、メール対応でなく、コールセンターに外注し、電話受注の窓口を設ける。今まで、ホームページは見ていたが、インターネットでの注文にためらっていたお客や高齢者のお客が取り込めるはずである。
●CTIの今後
小規模小売店でのCTIの利用は、まだ少ない。だからこそ、そこにチャンスはある。インターネット通販を始めようとしたが、すでに同じ業種で有名店が出ていた。インターネットでは、出遅れたと感じている企業や店もあるのではないだろうか。
CTIは、POSシステムやポイントカードと違い、すぐにお客への行動が起こせるツールである。導入したその日から、お客に価値を認めて貰える。まだ、導入事例が少なく、他で実施していないサービスを提供できる。顧客サービスで一番を狙えるチャンスである。
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